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 ≪西館の屋上 再び≫

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 クルクル。
 クルクル。
「ふぅむ……」
「……あの」
「ちょっと待って!」
 小夜さんがクルクルと、僕の妹の周りを回って
いる。なにか薄手の文庫本を手にもって、真剣な
表情で彼女の顔を見つめて。
 なんというのか、こういうのを既視感というの
だろうか。ただ、あまり思い出したくない記憶と
異なっているのは、今回は僕の妹だけでなく、美
絵ちゃんも連れてこられていることだった。
「新年早々なんでしょうね……」
「さぁ」
 コタツの右隣に座る先輩は、ミカンの中心に指
を突っ込んだり、ミカンを上下にひっくりかえし
て1人○×ゲームをしていたりと、嬉しそうに上
の空だった。とりあえず遊んだ物を食べているう
ちは文句はない。
 そして、この人は変わらないなと微笑ましくも
あった。
「しかし今回はなんだろうなぁ」
 例年通り自作のおせちを箸で突つきながら、僕
はまた不思議な光景に目をやった。
 妹と美絵ちゃんは、小夜さんが持ってきた薄い
緑色の――お嬢様学校風の制服を着せられている。
そして小夜さんの手にある本は“マリア様が――”
まで題名が見て取れた。
「まぁ……あれはあれで悪くない」
 人知れず――特に先輩には聞こえないように呟
く。
「いけるわ! 外見的にも性格的にも文句なし!」
「……?」
「……?」
 小夜さんの何かに問題はなかったらしく、彼女
は妹と美絵ちゃんの肩に同時に手をやり、熱い眼
差しを向けていた。
「今度の夏、美絵と萌ちゃんでスールいうことで
有明で大人気よ!」
「…………」
「…………」
「…………」
 さやか先輩と妹と美絵ちゃんは、小夜さんの言
葉の意味が分からないと目を丸くしている。
「あー」
 だが僕は、なにかに気づいてしまった。
 流行ってるからなぁ……。
「じゃあ、僕はアレか」
 よく見れば、小夜さんの荷物に男子用の制服も
見て取れた。多分、あっているのだろう。そうで
あって欲しくは無いのだが。
 そして僕は溜息をつきながら、遥か遠い“ごき
げんよう”の世界を夢見た。
「ギンナン王子」
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“戻る” _

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