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 ≪西館の屋上≫

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 クルクル。
 クルクル。
「ふぅむ……」
「……あの」
「ちょっと待って!」
 小夜さんがクルクルと、僕の妹の周りを回って
いる。なにか分厚い本を手にもって、真剣な表情
で彼女の顔を見つめて。
「新年早々なんでしょうね……」
「さぁ」
 コタツの左隣に入った先輩は、ミカンの中心に
指を突っ込んだり、ミカンを人の顔の形に並べて
なにやら嬉しそうに上の空だった。とりあえず遊
んだ物を食べているうちは文句はない。
「なんだろうなぁ」
 自作のおせちを箸で突つきながら、僕はまた不
思議な光景に目をやった。
 妹は、小夜さんが持ってきたシスターの服とい
うのか、お嬢様学校の制服を着せられている。そ
して、小夜さんの手にある本は“空の境――”ま
では題名が見て取れた。
「しかし……あれはあれで悪くない」
 人知れず――特に先輩には聞こえないように呟
く。
「いけるわ! 設定的にも文句なし!」
「……?」
 小夜さんの何かに問題はなかったらしく、彼女
は妹の肩に手をやって、なぜか僕にも熱い眼差し
を向ける。
「今度の夏、あなたと蒼司先輩でコクトー兄妹と
 いうことで有明で大人気よ!」
「…………」
「…………」
「…………」
 妹とさやか先輩は、小夜さんの言葉の意味が分
からないと目を丸くしている。
「あー」
 だが僕は、なにかに気づいてしまった。
「先輩……小夜さん、去年の年末に東京に出かけ
 ませんでしたか?」
「あぁ、うん。なんだか凄く大切な用事があった
 んだってね。伊月先輩の巫女服を持ってったか
 ら神社のお手伝いかな?」
「……あぁ、行き先は多分あそこです」
 僕は溜息をつきながら遥か遠い世界を夢見た。
「西館の屋上」
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“戻る” _

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