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≪白い部屋、ブラックジョーク≫

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先書き
 ほんとうに趣味の悪いブラックジョークです。
 わざわざSSを読んで気分悪くなるのもなんなので、
 なるべく読まない方がいいですよ……本気で。
  ちなみに、御影は本当の精神科がどんなものである
  のかを知っていて書いています。だから、これは間
  違いなく嘘でたらめですのでご注意を。

 しかし、咳も出るし頭がぼーっとする……。

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 なんとも恐ろしいことに私は風邪をひいたことがない。
 だから医者を訪れた。
 病室は清潔過ぎるほどまっ白で、椅子に優雅に腰掛け
る足の長い先生も、まっ白な白衣を着ていた。
「先生、私、どうしても風邪をひかないんです」
「はぁ。それは羨ましい」
 コンコン、とマスクの内側で咳をしながら、不養生な
若い先生が、はれぼったい瞳を私に向ける。
「そんな落ち着いてる場合じゃないんですよ! 本当に、
こんなに風邪をひかないなんておかしいんです! 生ま
れて20年、他の大きな病気には結構かかっているのに
風邪だけをひかないんです!」
 私は思わず大声をあげていた。
 本当に今年は風邪が流行っていて、私の同室の人間達
も日に日に寝込んでいく中、私だけが全くの健康体なの
だ。
 ここまで来ると怖いってもんじゃないか。
「ちゃんと診察して下さい!」
「診察するのは良いですけどね……お金かかっちゃいま
すよ?」
「医者が患者を診察しないなくて病院と言えますか!?」
「患者じゃないんなら、禅寺にでも行って下さいよ……」
 ぶつくさと呟きながら、彼は私の口の中を確認して、
聴診器を胸にあてる。なんだか全てがおざなりだった。
「……異じょ……んん……異常なしです」
「ありえない!」
「そうですか……じゃあ、風邪ということにしておきま
しょう」
 彼はカルテを書き直そうとする。本当にミミズがのた
くったような汚い字で、あれが他の人間に読めるのか不
安になる。
「なんですかそれは! 先生は私をバカにしてるんです
かっ!?」
「バカにしてるのか、されてるのか……あぁ、病状は恋
煩いとかにしましょうか? だから風邪をひけない」
「落語をやってる場合じゃないですよ!」
 私の叫びは泣き声に近かった。
 先生もこめかみに指を当てて目を細める。
「あなたは、どうしたいんです?」
「……私は」
 と、背後で部屋の扉が開いて、コーヒーカップを持っ
た眼鏡の医者が入ってきた。
「あぁ、あなた……」
 彼はにこやかに微笑んで、私にそっと手をさしのべる。
「ほら、部屋に帰りますよ」
「え? どうして?」
「ここは内科じゃないんですよ」
「精神科です」
 椅子に座っていた先生も頷く。
 私にはなにがなんだか分からなかった。
 ただ、風邪をひきたかったのだ。みんなと一緒の風邪
をひきたかっただけなのだ……。

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「で、君は?」
「え?」
 眼鏡の医者が、椅子に座っている同僚にも笑いかける。
「僕の白衣を着て、僕の机に座って、カルテに落描きを
 して、なにをしてるんです?」
「え? え? え?」
 彼はわけが分からないと目だけをキョロキョロと動か
す。
「まぁいいや。とりあえず落ち着きましょう」
 眼鏡の医者はベッドに腰掛けて、コーヒーを美味しそ
うに一口だけ飲み干す。
「で、どうしました?」
 元から座っていた先生は、コンコン、咳をしてから優
雅に足を組み直す。
「先生……私、風邪なんです」
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“戻る” _

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